一般社団法人ダイアロゴス

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日付: 2019年2月10日

相談援助の覚書 差異としてのソーシャルワーク①

ジェネリックな職業としてソーシャルワークはあるし、ケースワーク、グループワーク、コミュニティオーガニゼーションの三分類で進んだ取り組みも1950年代以降は統合の流れで進んでいるし、心理療法の乱立と同時期にソーシャルワークアプローチの乱立があったが、ジェネラリストなアプローチで総合的なアプローチが主流となった。それは学術的にそうなったというよりは、コミュニティケアやライフスタイルの変化からニーズが多様化した中、各々のソーシャルワーカーが実践的な支援活動からの必要性でそうなったと言える。

一方で、我が国ではソーシャルワーク専門職として「社会福祉士」があるが、設立経緯の善し悪しは別として精神障害者へのソーシャルワーク専門職として「精神保健福祉士」がある。

最近は児童虐待が社会的に問題視され児童相談所が批判の的となり児童福祉司の質を高める必要性が語られる中、児童分野に特化したソーシャルワーク国家資格の創設が検討されている。国家資格にすると社会的にも意識されるようになるので、最低限の質の向上には寄与する場合もあると思うが、本質的なソーシャルワーカーの質の向上にはならない。児童ソーシャルワーカーができれば医療ソーシャルワーカーとか司法ソーシャルワーカーなどそれぞれに国家資格があった方が良くなる。職域を拡げる公共事業みたいなものだ。

賛否は別として、総合的相談支援を目指し統合するのか、ソーシャルワークを差異化していく現在の制度改革議論は一歩外からみると、まるで喜劇だ。

喜劇から視点を変えて、高齢・児童・障害・司法・地域・医療などなど、現場では生業を維持するために獲得されたソーシャルワーカー達の価値観の中で、総合的な相談支援は、ソーシャルワークの質的な繊細なニュアンスを曖昧にし支援レベルの低さの言い訳を与えソーシャルワークの質の低下を招いているようにも見える。

ソーシャルワークのそれぞれの違いを明瞭に示し、善し悪しを対話・評価していく枠組みが統合化の一方で必要なことなのだと思う。

坂根 匡宣